続きです





「僕、悟浄のところにすまわせてもらうことにしました。」

やたらとこざっぱりした寺の一室、
俺の髪がヘンだとかやかましいサルと俺が揉み合ってる途中に、
ヤツは涼しい顔でさらりと三蔵に言ってのけた。

超絶美形の坊主はといえばいつもの無表情のままで、
ふと俺を見据えた後に、鼻先でフンと嗤った。

何だよ一体。
まるで俺がタラシだとでも言いたいのか。
俺のとこに住むなんてはっきりヤツの口から聞いたのは
俺も今が初めてだっちゅーの。
クソ。

「な、八戒、林檎食ってもいい?」
「じゃ皮むきましょうか。」
「そのままでいいよ。」
「でも消毒薬がついてるかもしれないし。」

悟空はヤツの新しい名前に何の違和感も無いらしい。
歳の離れた兄弟か学校の先生と生徒かといった風体に和み始めたヤツらを、
俺と三蔵は煙草をくわえたままぼんやり見つめていた。

やたらと清々しい新任教師アンドできの悪い生徒とは対照的に、
仏頂面で煙を吐き続ける俺と三蔵はまるで不良の高校生だ。

ゾクのリーダーが子分を呼ぶかの如く無造作に、
振り向きもせずに三蔵が「オイ」と俺を呼んだ。
なんとなくむかついたから、俺も脇を見もしないで
煙草をくわえたままの口で「あん?」と答えた。

「迷惑か。」
「あん?」

つい振り向いた俺に、三蔵はわずかな顔の動きだけで、ヤツを指した。

「言いにくい事はむしろ早く言った方がいい。」
「・・。」
「迷惑なら、の話だが。」
「べっつに。」

何となく俺は落ち着かなくなった。
読まれた気分になったのか余計なお世話だと思ったのか俺自身良く分からないまま、
具合の悪さを誤魔化して俺は三蔵に向き直ると、その紫暗の瞳を睨みつけた。
いわゆるガンをつけたつもり。
迂闊に美人に顔を寄せたりして、つい別の気分になりそうな衝動は抑えた。

「アンタこそ言ってないコトあるんじゃない?」
「俺が何を。」
「ヤツを引き止めるんなら今だぜ?」

精一杯の虚勢で美人を睨み付ける俺の鼻先で、
三蔵は深々と煙草を吸い込んでは、
俺に視線を絡めたまま、俺の顔面にその煙を吐き付けた。

「コラ!。」

最高僧の法衣の襟首をつかみかけた俺の前、
別に俺を止めるつもりでもないだろうが、
皿を手にした小猿が割って入った。

「林檎。八戒が皮むいた。」

既に俺のこと事は眼中にないかのように、
三蔵は悟空が差し出した皿を黙って手に取った。

「俺は一人で充分だ。」
「あん?」
「一人で、充分だ。」

小猿を見下ろして独り言のように繰り返した三蔵に、
悟空はその大きな瞳を上げた。

「なに?、三蔵。」
「別に。」

子猿はよく動く大きな目で三蔵を見上げると、
わけが分からないというように小さく首を傾げた。
当の三蔵はといえば、やっぱり仏頂面のまま、
子猿の頭を撫でるというよりは掻き回して告げた。

「あっち行ってろ。」
「うん。」


どーにもこーにも。

人間とゆーのは誰も彼もが、
自分自身に関しては不器用にできているらしい。


- 続 (3/4) -