最終章。
7
「ガキの頃さー、風邪引くとこわかったなー。」
病人のわりに彼は寝付きが悪くて、
僕が食事を運んだり額のタオルを替えたりしている間、
ベッドで天井を見上げながら一人で話し続けた。
「オレんち適当だったからさー。
かあちゃん男ん家泊まりこんだり兄貴友達ん家連泊してたりさー。
まあ俺も普段は家出してたんだけど。」
「枕のタオルも替えときましょ。ちょっと頭あげて。」
「ん。」
「で、すごくたまに俺が寝込むじゃん。で、誰もいなくて、
もしこのまま誰も帰って来なくて、俺動けないくらい熱出たら、
そのまま死んじゃうのかなーなんてさー。」
「良かったですね。」
「ん?」
「もうそんな心配要りませんから。」
あなたをひとりになんかしない。
「ずっと僕がいますから。」
「・・いーの?、俺で。」
「ええ。」
「気が多いぜ、俺は。」
「矯正します。」
「無理。」
「します。」
「無理。」
「僕を甘く見ない方がいいです。」
「ム・リ!。」
彼と少し睨み合ったあと、仕方のないやり取りに僕はふと笑った。
そう、そのとききっと僕は、とても自然に笑ったに違いない。
彼の柔らかな安堵の表情がそれを教えた。
血の色にも似た紅の瞳は
例え自分が病の床にあっても
こんなにも他人の幸福に敏感で、
だから僕はあなたの元でだけ、息ができるに違いない。
あなたを守りたいと思う。
だけどそれはきっと言葉にする必要なんかなくて、
これからの月日で示していければいい。
「何?。」
「・・いえ。」
あなたに出会えて良かった。
END.
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最後までおつきあいありがとうございました!。
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