悟浄語り形式、旅に出る前の悟浄&八戒。前の続きです。




やっぱり女はイイ。
もし俺が物書きならここは倍角で書くところだ。
女はイイ。


飲み屋2階の連れ込み宿から自宅までの朝帰りがてら、
俺は余韻を噛み締める。
朝帰りっつーかもう昼だけど。

なんたって、柔らかくてキュッ、で、ボン、で、
これにまたスィートな高音で、『あんっ』だぜ。どうよ。
「あん。」

いけね、声に出しちまった。
俺が言う必要もないんだよな。
すれ違った通りすがりの女が笑って振り向きやがった。
こっち見んなよ畜生。
お、割と可愛いじゃん。
「あ、ど〜も〜。」

シカトかよ。
まあいいや。

俺の脳裏にもこの手のひらにも、さっきまでの女の感触が色濃く残っている。
どんなもんだ。
当分オカズにゃ事欠かない。

・・っとそうだった。
オカズ仕入れてる場合じゃなかった。
なんたってここのところ、俺はそんなもんを使えたためしが無い。
何故かっつーと。
ここはもし俺が物書きなら極小に書くところだ。
つーか、書かねえ。書けるかよ。

つまりだ。
俺は『あの日』以来、毎晩抜かれている。

しかもヤローにだ。
(・・・。)

何でだとか聞かないでくれ。
もう俺にも良く分かんねえ。
原因は、いろいろとある。
いろいろあるんだが一番の要点はだな、そう。
ヤツが上手過ぎるって事だ。
ああここは別に倍角の必要は無かった。

それはともかくだ。

ヤバいんだよ。ヤツは。
ヤツだけは。
何故かっつーとそれは俺的にいろいろあるわけでさ。
いいんだよその辺は。
今は言いたくないの。
で、だ。
それを差し置いてもヤバいのはだな、
なんつーか、そうなって以来、俺達付き合ってるみたいになってんじゃん?。
そんでヤツが聞くわけよ、
「帰りは何時頃ですか?」なんてな。
これはもう牽制としか思えねえ。

俺はもう永遠に女とヤれないって事か?
そんなわけねーだろ。
もうやりにくいんだよ全てが。
大体俺はアイツの恋人になる約束した覚えもないわけでさ。
イイ女がいたら俺はキメる。
そうでなくっちゃ俺じゃねえ。

で、久しぶりにキメたわけだ。
女、1週間ぶりだぜこの俺が。
あーそうだよ。
ヤツに抜かれはじめてからなんかこう、正直、悪いみたいでさ。
今までおとなしくしてたわけ。

だけどさ、良く考えたら別に俺悪くなんかないワケよ。
ね、そう思うでしょ?。
誰に聞いてんだ俺。

ブツブツ言ってる間に家の前に着いちまった。
もう陽も高いし朝帰りとも言えねえな。泊まりだ泊まり。
外泊。悪いかよ。悪くねーんだよ。

なのになんでこんなにビクついてんの俺。
ドアノブ握った手が震えてる気がするんですけど。

気合い入れろコラ。
どってことねーよ。あんな居候の優男。
ウルサイ事言ったらガツンと締めてやる。




「ただいま〜。」

玄関に一歩踏み込むなり、俺は足を止めた。
何故ならば俺の頬すれすれを一筋の殺気が掠めたからだ。
俺は身動きもできないまま、横目でドア枠にゆっくりと視線を投げた。
そこでは、たった今すっ飛んできて木の枠に突き刺さった果物ナイフが、
細かく揺らいでビーン、と音を立てていた。

「ああ。おかえりなさい。」

台所からは、殊更に普通の声が響いた。

・・ヤツは今、あそこからコレを投げたのか?。
スゴくない?、あの距離で、曲芸師のような正確さじゃねえ?。
ってもしかして外してたりすんのか?、狙いは俺だったりして!?。

微動だにできぬまま、俺の背中には一筋の汗が流れた。


負けるな俺。
勝負はこれからだ。
ナメられたままでいると思うなよ。
本当の俺の怖さを今まさに見せつけてやる。


- 続 -



見せつけられないと思いますけどね。
それに文字サイズ指定されたのなんて初めてです(^^;。

一見開け広げてるようで、割とあとまで本音吐かないんですココの悟浄さん。
なので後半までお付き合い頂けたら幸いです。
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