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じょうたん(?)


悟浄と一緒に住むようになってから数ヶ月。
ここ最近は、悟浄は家に帰ってきたり来なかったりでたまに悟浄が僕の一人暮らしの家に遊びに来ているような感覚を起こしそうな日々が続いている。
悟浄が帰ってきたときに言う『ただいま』という言葉がここは悟浄の家だと言う事を思い出す。
そんな事を悟浄に言うと悟浄は
「今は俺だけの家じゃないっしょ」
と言って笑う。僕が首をかしげると
「今はお前の家でもあるんだぜ?」
とちょっと照れたように言う悟浄。
僕はここにいても良いのだと悟浄の側にいても良いだと安堵しそして笑った。

何処にも行かずにただソファーの上でぼーっとしている悟浄。
煙草にも火を付けずにただぼーっとしているだけ
「珍しいですね」
そう声をかけると、曖昧な顔で笑いながら
「なぁ〜にが?」
「煙草」
「あぁ〜」
と言いながら思い出したように煙草を手に取り火を付けようとする悟浄
「あ。ごじょっ」
「んー」
「そっちフィルターですよ?」
「おぅあっ」
びっくりしたように煙草から手を離すとちょっとボー然としている感じで。
でも今までのように魂がどこかに行ってるのではなくこっちに帰ってきてくれているので、少し安心して声を掛ける
「どうしたんですか?」
「んー。鍋喰いてぇなぁと…」
話の繋がりがいまいち良くつかめないけれど曖昧というか気の抜けた返事を返すと、ちょっとにが笑いをしてそれから、
「三蔵とか猿とか呼んでどんちゃん騒ぎがしたい。何か最近騒いでないしぃ〜。ダメ?八戒」
そいうって笑う悟浄が何故かはかなげに見えてしまい、自分の目を疑って思わず目をこする。
「どした〜?目に何か入ったか?」
心配してくる悟浄に慌てて作り笑いを浮かべながら
「イエ別に。良いですよ〜。悟浄が三蔵と悟空を呼んできてくれるなら。その間に準備しておきます」
「んじゃ行って来るわ〜」
そう言って部屋を出ていく悟浄。
面倒くさがって話が流れると思ったのに。昨日の悟浄は本当に変だった。

面倒くさいとかだるいとか色々言いながらも何かにつけやってくるうざったい男が今日もやってきた。
何を思ってここに来るのかと思い問えば、「暇つぶし」と答える。
この男が本当に暇ならば絶対にここには来ずに、繁華街をうろついているだろうと言う事は判っている。
そしてこの男が一人で来るときは必ず何か心に抱えていると言う事も何となくは判っている。
だがこの男は何も言わずにただひたすら悟空が怒って出ていくまで、猿をかまい出て行ってからはひたすら壁に凭れて何も話さずにただひたすらぼーっとし、時間がたつといつものヤツに戻り部屋を出ていく。
最初のうちは部屋からつまみ出したが出した先で座り込みぼーっと何もしないでいるヤツを見てから、部屋から出すのを止めた。
普段では感じられないくらいとても危ういバランスの中にいるようなヤツを見てから。
「で、今日は何の用だ?」
珍しく悟空をかまわずにへろへろと笑っている馬鹿にきくとまた笑いながら
「鍋、喰いたくってさ〜鍋だと八戒と二人じゃつまんねだろ?だから誘いに来た♪行くだろ猿?」
悟浄が悟空に問えば悟空は二つ返事で頷く。
「三蔵様は?」
そう言って笑うヤツを見ると何故か必死に来てくれと言われているように感じてしまうのは何故だろう?
「行ってやっても良いが」
「らっきぃ〜。んじゃ早速行こうぜ夜、雨になるらしいし」
雨か…
「あ〜。雨だから嫌だとかじじくさい事言う?」
「だれがじじくさいだって?行ってやるよさみし〜んだろ?」
一瞬、雨の事を口に出した事を後悔するかのような顔をしたヤツが気にくわなくて、そう言うと少し笑って
「んじゃ行きますか」
と猿の頭をぐしゃぐしゃにしながら部屋を出ていった。


「はっかーい。今日何鍋っ?」
嬉しそうに入ってきた悟空を見て少し笑いながら
「水炊きです」
「わーい。とり〜」
「食えりゃなんでも良いんだろおまえわ」
そう言って悟空の髪をくしゃくしゃにする悟浄。
「さっきからなんなんだよ。ごじょ〜っ。ぐしゃぐしゃにすんなよ!」
そう言って抗議する悟空。ちょっと不審に思ってしまい思わず三蔵を見ると
「ここに来る途中ずっとそんな感じだ」
と短く告げられる。
「スキンシップでもしたいんですかね?」
「さぁな」
そう言って煙草に火を付ける三蔵を見ていると、
「はらへった〜」
という悟空の声がして、それから鍋パーティが始まった。
「あ」
食がある程度進み、箸の進みも遅くなった頃、悟浄が短くそう言うとため息を漏らす。
「どうしたんですか?」
「煙草、切らした。買ってくるわ」
「買い置きは?」
「これが最後。ちょっと行って来るわ」
そう言って今吸っている自分の煙草を指すと立ち上がり、三蔵の方をちらっと見てから部屋から出ていく
三蔵が少し驚いた顔をしていたので、そっちに気を取られていると、バタンという扉の閉まる音がする。

何故かその音がとても寂しく感じられて外を見ると雨が降っていた…。

鍋の中身もまったくなくなり。食後にコーヒーを飲む頃合いの時間になっても悟浄は帰ってこない。
「もう少し大きな土鍋にしますか」
「?」
「4人で鍋するには少し小さい気がしたんですよ。これから鍋のシーズンですしね」
「そう言う話はアノ馬鹿としろ」
「居ないから三蔵にしてるんじゃないですか」
そんな話をしながら、二人でコーヒーを飲む。
何か話していないと沈黙がツラくて、雨の日は必ず側に居てくれた人が居ないのがツラくてため息をつく。
悟空は満足したのかウトウトと眠りについている。
三蔵は、不機嫌な状態でコーヒーを飲んでいる。ふとさっきの事を思い出して話の繋がりもなくきいてみる。
「さっき。悟浄に何を言われていたんですか?」
「は?」
と短く問い返される
驚いた様な顔をしていたときの事をききたくてと言うとかなり嫌そうな顔をしたので、これ以上は話せないと思い曖昧に笑ってみる。
「『ゴメン。後頼む』」
「は?」
今度は僕が短く返す。
「雨だから、お前一人にしておくのが心配だったんだろ?」
「へ?」
どんな女性の所に居ても雨の日は必ずここに居てくれた悟浄が?何故今日だけ?
「雨。ダメなんだろ?相変わらず」
らしくない三蔵の言葉に苦笑しながら、返事をする
「そうでもないですよ。最近は…」
悟浄と一緒にいたから…
「でも、何で今日に限って」
「アイツにだって何か抱えてるもんがあるんだろーよ…わかりづれーけど」
最後の方の言葉は自分に言い聞かせるように言う三蔵。
三蔵は何かを知っているのだろうか?
悟浄の抱えている何かを。
「そうですね…。甘やかされてますよね。僕」
そう言って笑うと。
「アノ馬鹿のほうがお前に甘やかされてんだろ。」
「そうですか?」
「違うのか?」
「さぁ?」
そんな受け答えをしていると三蔵は眉間にしわをよせてため息をつく。
「明日。帰ってきたら訊いてみりゃぁいい」
「そうですね。今日は?悟浄のベット空いてますけど泊まっていきます?」
「アレをおぶって帰れと?」
そう言って指を指した先には悟空が大の字になって寝ている
「じゃ、ご宿泊ということで準備しますね」
そう答えてから少し笑った。

眠れねぇ
どういうわけだか眠れなくて外を見る
外は雨。嫌な事を思い出しそうで思わず舌打ちをしてから煙草に火を付ける
人影?
普段ならわざわざ雨の日に外にでたりなど絶対にしない事なのに何故かその日はその人影が気になり、外に出た

「何やってんだ?この大馬鹿モノ」
返事が返ってこない大きな物体を蹴るがやはり無反応で、何処を見ているのかも判らない状態、ヤバイ薬でもやってるのではないかと思い、顔を近づけるが特に何か匂うわけでもなく、ぼーっと遠くを、見つめている
「中に入れ」
返事はない
「…家の中に入れ。きこえないのか?」
少し反応した様な気がしたので胸ぐらをつかみ大声で言う
「沙悟浄。お前の家に入れ!」
一瞬目が合ったかと思ったがその目はやはり遠くを見ているようで近くを見ていない。
俺を見ていない。
「俺を見ろ!俺の声を聞け!きこえてるか?」
今度は逆に耳元で言うとビクッと肩をふるわせる。
「何があったか知らねぇが、一度拾ったもんはそれが離れるまではちゃんと世話をしろ。お前が受け入れたんだろ?俺を巻き込むな」
ヤツの目を見ながらそう言ってやると、少し元のヤツに戻った気がして手をゆるめる。
「ごめ…」
「謝るぐらいならするな」
「きょうていうか昨日だけは独りになりたかった…誕生日だったから…でも、はっかいほっとけないし…」
独り呟くように言うのを黙ってきいていると引っかかった言葉を思わず反芻する『誕生日』だから独りになりたい。判らなくもないが…。
「そう言えばいいだろう八戒に」
「言ったらタブン俺の側を離れない」
「そうか?」
「八戒、俺に甘いから」
「そうだな」
八戒の事を話ながら笑う悟浄を見て何故か面白くない気がする。
「でも、甘えてたらダメなんだ…独りでも居られるようにしないと」
「また独りになるのがこえ〜か?まるで悟空だな」
「怖い?よくわかんね〜ケド、多分そうなんだろうな。俺こんな弱かったっけ?」
「しるか」
「だよなぁ〜」
そう言いながら笑う悟浄を見てやはり面白くない感じがする。
「あ。さんきゅーな」
「何が?」
「八戒の側に居てくれて…」
八戒しか眼中にねぇのかてめぇーわ。
「…それと俺に気付いてくれて」
そう言われたとたん俺の視界が塞がる…ってヲイ。
「…まぁお礼って事で」
そう言ってイタズラが成功したかのように笑う悟浄。
「やっすい礼だな」
「うぁ〜三蔵様ったらシツレイネ」
笑いながら言うヤツの腹に蹴りを入れ前屈みにさせると髪をぎゅっとつかみ、ヤツの顔を俺の方に寄せ、ヤツの唇にかみつくようにキスをした。

俺は何故だか判らないがコイツに惹かれているという事に気付いた。

えんど。

ごめんなさい。




絶対八戒振られてると思うんですがどうなんですか無是さん!。痛たたた。
自分もサイトでそんなパラレルを書いているのでひとには言えないのですが。うわーん。

それぞれの思いの向きが推し量れて素敵なお話だと思いました。
3人がすごくあのひとたちらしいし。弱めの悟浄っていうのもなんか新鮮でぐっときました。
あとは八戒さえ愛されていれば・・(<クドイ)。
でもここの八戒は調査員の井野さんに比べたら全然幸せだった。
ああ八戒を救え。救ってくれ。俺の人生の命題。

わけわからん事書いてすいません。それくらい深読みしちゃう内容でした。
あ、そうそう鋼原作もちょっと読んだけど話の続きはメールで(笑)。

ありがとうございました!!。